無線測定


無線機器が電波法の設備条件に合致しているか?あるいは設計した無線機器の特性が設計規格通りになっているのかを
確かめるためには測定(評価)を行う必要があります。
「電波法で定められた電波の質が電波法に合致しているか」を確かめる特性試験の試験方法や受信特性の試験方法を紹介いたします。
特性試験では、電波法に合致しているかを見ますので、送信機の特性を中心に試験を行います。
●送信機の試験項目
送信機の試験項目としては、送信電力、発信している電波の周波数、変調の特性、送信電波の帯域、スプリアスの強度など電波の質を測定します。要するに、他の無線局に混信や妨害を与えないために、、、。
●受信機の試験項目
受信機は、電波法で規定されているのは、不要輻射の強度のみです。
受信感度などは規定されていません。しかしながら受信機の能力を見るのに測定は必要です。
ARIBで基準は制定されていますので、メーカーはこの基準に準拠するように努めます。

FM無線機の特性評価(試験)

FM無線機の特性評価を例にして、測定方法・特性試験の試験方法を紹介します。
●受信特性の評価
受信部の特性評価では、受信感度をはじめ、妨害波に対する特性の評価を行います。受信感度の測定法には、
受信機から出力される雑音の大きさを用いて特性を評価するNQL法と受信電波に変調をかけ、復調出力の信号・雑音・歪で評価する、
SINAD法があります。
最近は、NQL法よりもSINAD法を用いる傾向にあるようです。SINAD法の方が、復調信号を用いて評価を行いますから、
現実の通信での評価に近いのではないかと考えています。
信号をS、雑音をN、歪をDとしSINADは次式で導かれます。単位はdB(デシベル)を用います。

SINAD(dB)=(S+N+D)/(N+D)

受信機の評価項目を表1に示ます。
No 評価項目 評価条件
1 受信感度 SINAD12dBのとき
2 帯域幅 6dB幅
3 隣接チャンネル選択度 SINAD法による測定
2信号特性
4 相互変調特性 SINAD法による測定
3信号特性
5 スプリアス感度 SINAD法による測定
2信号特性
6 受信SN比 RF信号の規定値の点
例)
15dBμVEmf、30dBμVemfの点
   
7 総合雑音歪 RF信号の規定値の点による
例)
15dBμVEmf、30dBμVemfの点

表1
下記に、測定方法を説明します。SINAD計に繋ぐ復調出力は、無線機のスピーカー出力を用いる場合が多いのですが、
スピーカー出力は、測定前にクリップしないよう注意する必要があります。
1.受信感度(基準感度)
1000Hzの周波数で最大周波数偏移の60%まで変調された希望波を加えた場合において、装置出力の内信号、雑音及び歪の出力の和と雑音、歪の出力の和との比が12dB(12dB SINAD)とするための、受信機の必要な入力電圧を言います。
測定は、図1のようにFM無線機(以下無線機)を接続します。


図1

SG:標準信号発生器
SINAD計:上述のSINADを測るための測定機
を表します。
測定の手順は次の通りです。
(1)SGからのRF信号の周波数を受信機の受信周波数のあわせます。
(2)1000Hz、60%変調がかかるようにSGを設定します。
(3)SGのRF出力を変化させながらSINAD計が12dBとなる出力の合わせます。
(4)この時のSGのRF出力がこのFM無線機の受信感度となるわけです。
2.スプリアスレスポンス

1000Hzの周波数で最大周波数偏移の60%で変調された信号を、最小受信感度より3dB高い希望信号波を加えます。
また妨害波には、400Hzに周波数で最大周波数偏移の60%まで変調された妨害波信号を同時に加えます。
このとき受信感度が、12dB SINAD値を得るための妨害波入力を測定します。
このような測定方法を2信号特性といいます。次に出てくる隣接チャンネル選択度も同じ測定方法です。
妨害波の周波数は、スーパーヘテロダイン方式ではイメージ混信となる周波数を妨害波とし加えます。
イメージ混信は周波数変換する際にミキサ(乗算器)を使うことにより起こるものです。
測定のための接続を図2に示します。


図2

SG1:希望信号波の標準信号発生器
SG2:妨害波の標準信号発生器
SG1とSG2は2信号パッドにて接続します。
測定手順は次の通りです。
(1)SG1より感度より3dB高い希望波(1000Hz 60%変調)を入力します。
(2)SG2より妨害波(400Hz 60%変調)を加えます。妨害波の周波数はF±IF、F±1/2IFなどです。
(3)妨害波の入力を変化させて 12dB SINAD値を得る、妨害波入力を得ます。
(4)妨害波入力ー基準感度がスプリアスレスポンスとなり単位はdBcとなります。
3.隣接チャンネル選択度
測定の接続・測定方法はスプリアスレスポンス測定と同じ方法で測定します。
妨害波の周波数を隣のチャンネル(周波数)に合わせます。
4.相互変調特性
1000Hzの周波数で最大周波数偏移の60%の変調された、最小受信感度より3dB高い希望信号波を入力します。
妨害波は今度は2信号を入力します。妨害波は、2信号特性の測定と同様、周波数400Hzの変調波で60%変調された信号を用います。
2つの妨害波を同じ強さを入力し、12dB SINAD値を得る妨害波入力を測定します。
測定の接続は図3に示します。


図3

SG1:希望信号波の標準信号発生器
SG2:妨害波の標準信号発生器
SG3:妨害波の標準信号発生器
3信号パッドを用いて3つのSGを繋ぎます。
測定手順は次の通りです。
(1)SG1より感度より3dB高い希望信号波(1000Hz 60%変調)を入力します。
(2)SG2より隣接チャンネルに妨害波(400Hz  60%変調)を入力します。
(3)SG3より次隣接チャンネルに妨害波(400Hz  60%変調)を入力します。
(4)2つの妨害波の同じ量だけ変化させます。12dB SINAD値を得る、妨害波入力を得ます。
(4)妨害波入力−基準感度が相互変調特性となり単位はdBcとなります。



●受信感度の評価
無線機の設計現場では、単に受信感度の感度点だけを測定するのではなく、細かく特性特性を評価していきます。
その一例として、標準信号発生器(以下SG)より受信機に入力するRF信号うを変化させて受信機の評価を紹介いたします。


表2

表2をご覧ください。
青色は、周波数1000Hzで最大周波数偏移の60%で変調された希望信号を加えて、復調出力をプロットしたものです。
桃色は、周波数1000Hzで最大周波数偏移の60%で変調された希望信号を加えてSINADを測定しています。
黄色は、無変調の希望信号を加えていったときの復調出力を測定しています。
SINADはグラフにて見やすくするためにマイナス表記としています。ちょうどー12dBとなるRF信号入力の値が12dBSINAD感度となります。
また青色と黄色の曲線の差がこの受信機のSN比を表していることになります。その差が20dBとなるRF信号入力の値が20dBNQL感度となります。
信号通過特性の詳細を調べるなどたくさんの特性評価を行うことになります。
●送信特性の評価
作成中のため暫くお待ちください。



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